腕組みが解けるまで

土屋 GET DOWN のブログです。私の日常を綴ります。あとは音楽と本のことを少々。

彼女の日

今日はパンが二割引きだ。 贔屓にしているパン屋が、全品二割引なのだ。 私は太ももをペチンと一発、自転車を急がせる。 海辺の我が家で潮風にさらされ続けている愛機は、相変わらずのキシみ具合だ。 踏み込めば蛾の鱗粉よろしく、サビがパッと舞って、サラ…

カレーで巡る幸福の世界のスパイスな話

長引くと思っていた所用が思いのほか早く終わった夕暮れどき、私は国体道路をテクテク歩いていた。 せっかく時間が空いたのだ、散歩でもという気になった。 ふとオープンテラスのバーが目に留まる。いつの間にオープンしたのだろう。 天神は店舗の入れ替わり…

アンサーソング

歌を歌える才能は、とても特別だと思う。 始めて詩を旋律にのせた人間は、人類史上最も美しい。 古代、言語は音楽だった、なんて話もある。 音楽が先で言葉があとなら、歌は必然であったわけだ。 遺伝子レベルで私たちに内在している。 現代は、歌にその場し…

明後日の咆哮

いつぞやぶりに書く。 ブログの開始からまる一ヶ月ほど滞りなく書いておきながら、その後を放置してしまうのなら、三日に一回の更新を心がけたほうが良いのかもしれない。 我が身の裡でふくふくと育った三日坊主に説教を垂れたい。 それにしても書き続けてい…

タルパ/フアン・ルルフォ

失った、と気づいてしまった時、 人は身の裡に空いた風穴を知る。 いかに醜く、汚かろうと、 失ったと感じれば、 対象は尊いものへと美化される。 亡失の風穴を自身の杭で空けておきながら、 まるで空虚を埋めるかのように、愛しむ。 人は、そうして、悔いを…

雪の断章/佐々木丸美

雪を纏う少女は、 強者からの排他と虚栄に、 世界の縮図を見る。 雪は当てもなく高く舞う。 根付くように深く積もる。 音もなく、とけゆく。 自身が纏った雪もまた、 世界の縮図と知る。 雪には人の法は及ばない。 雪が見せたもう一つの世界は、 憎悪も美し…

ブラック・ジャック・キッド/久保寺建彦

憧れのヒーローにはなれない。 その気付きに、何を得、失うかで、 人生は大きく左右される。 ブラック・ジャック・キッド、 キミは縋る憧れを失ったが、 かけがえのない魂を得た。 自分以外の何者にもなれない、 その気付きは魂の昇華だと、私は思う。 Late …

凍りのくじら/辻村深月

ドラえもんは、 二次元にて生まれ、 四次元から秘密を引き出し、 三次元へ光を放つ。 その光に照らされた芦沢理帆子は、 生を正面に見据え、歩み始める。 のび太も理帆子も、斯くいう私も、 少し不思議な物語で、 喜怒哀楽を多分に育んできた。 光は今も次元…

アルケミスト/パウロ・コエーリョ

対話、その行為を心に向けたことはあるか。 成立は実に難しい。 だが心に耳を傾け、 対話を実現させられれば、 心は夢へと導いてくれる。 錬金術師――夢を心に抱き、 金を、万物の理に見出す。 その心は世界とさえ対話をする。 夢は自身に内在し、世界と共に…

秒速5センチメートル/新海誠

距離や時間が、恋を愛に育むのは稀である。 距離に身を焦がし、時間に慰めを求める。 人は記憶し、忘れる能力が具わった生物だ。 だが全てを忘れはできず、記憶は断片化する。 春に舞い落ちる秒速5センチメートルは、 距離と時間から生じた、愛の、断片か。…

夜のミッキーマウス/谷川俊太郎

夜。 遥か上空。 宙から落ちたとして、 時間を自由に操れたとして、 恐怖に色彩を奪われず、 それでも、やはり、落ちている事実が変わらないとしたら、 私はおもいっきり大気と交悦する。 ああ、それを見たミッキーマウスが、 腹を抱えて笑ってくれると、い…

ジョゼと虎と魚たち/田辺聖子

死を見据えた者は得られる幸福を、悲観し避けるか、達観し享受する。 ジョゼは明らかに後者だ。 下半身不随にして、孤独に苛まれた先に見た境地。 ジョゼにとっての恒夫は、宝くじのアタリ程度なのかもしれない。 ジョゼは、死に活きている。 Late Night Tal…

アウグスツス/ヘルマン・ヘッセ

人は、疑い疑われ、共感を模索し、 愛し愛される過程を以って、処世を知る。 先天に賦与された愛の才能は、 厭世をもたらし、忌み嫌われるが、 万物に幸福を見出す能力により、補完された。 どういう仮定であれ、人の幸福は内面に育つ。 これを忘れてはいけ…

張り込みはあんぱん片手

昨夜は七時間ほどのロングDJだった。気がつけば明け方近くになっていたが、時間を忘れるほど居心地のいい夜になった。 始発で帰り、家に着くなり布団になだれ込む。昼過ぎまで泥のように眠った。 目が覚めると、腹が鳴った。いそいそと近所のスーパーに出か…

明日はやわめのDJ

以前、何かの記事で、DJは「Disk Jockey」から「Data Jockey」へ、と書いてあった。 分かりやすい喩えだなあと、とても感心した。 要はアナログレコード(以下、LP)を使用するDJが減り、PCやタブレットなどのデータでのプレイが増えてきている、という記事…

四畳半神話大系/森見登美彦

大学サークルにエルドラドを求め、 友だち百人つくるため孤軍奮闘す。 学生生活の青写真に薔薇色を夢見る。 だが、モテない学生はモテない。 類友が砂鉄の如く集まるのみ。 如何ともし難い仄暗い真摯が時空超え、怠惰の理を体現する。 四畳半は、モラトリア…

10年の付き合い

YAMAHAのYB-720というペダルを使っている。 かれこれ10年の付き合いだけど、今でもなお衰えることなく名器だ。 いつのまにか生産中止になっていて、故障したらどうしようと思っていた矢先に、パーツを扱っているお店を見つけた。 こういう時はインターネット…

高千穂へゆく

昨日は、宮崎は高千穂神社の境内でライブだった。 音玉という音楽イベントに、武骨サプリメントで出演させていただいた。 竹の灯篭と、樹齢ウン百年の木々に囲まれたロケーションは、とても幻想的だった。 夕暮れ前のステージ。お客さんと出演者とスタッフの…

回遊風景

回遊するは愉快。 私は友を訪ね、 夜を闊歩する。 胸には何も掲げず、 その夜ごとの色彩を享受する。 夜明けと共に私は白み、 再び何色にも染まる夜を待つ。 回遊するは愉快。 ――回遊風景 撮った画像を載せようとして、併せて文章を考えていたら、短い詩がで…

春琴抄/谷崎潤一郎

永劫の愛だろうか、 執着の欲であろうか。 人はどちらにせよ、得ようと欲すれば、至極思い切った行動に出る。 想い人の為に闇の世界に身を投じ、 変わらぬ美貌を生涯見続ける。 著者の最後の問に、私は首を縦に振りつつこう答える。 欲なしに愛を得ることが…

同じときを生きている

グルーヴってなに? って訊かれると困る。 ノリだよ、っていうのはやっぱり足らない。そもそも伝わらない。 言葉にできない、というよりも、言葉にならないものだ。 とはいえ何とか言葉にできないものかと思った今日なので、考えたことを書いてみる。 同じと…

夜間飛行/サン・テグジュペリ

倫理、道徳を、自身の哲学で覆う。 善悪の曖昧な境界に飛行機が一機、瞬く。 理解を求めない傲慢さが、大なり小なり、人を、時代を動かしてきたように思う。 犠牲を払ってでも貫こうとする信念を、時代は愛する。 では、人は何を以って信念を抱くのだろうか…

Late Night Tales について

以前、Twitterで「今宵のお供は――」の見出しで、本の感想を書いていた。 140文字以内で説明するという制限が結構おもしろかったので、このブログに引き継いで続けてみようと思う。 新たに、 〝Late Night Tales〟 というタイトルをつけた。 過去の〝今宵のお…